Home > essay | wotaku > ニュースに思う-「二次創作」と「関係性の価値が高まる時代」

ニュースに思う-「二次創作」と「関係性の価値が高まる時代」

ちょっと古い話題ですけど(というか書きかけのまま忘れてた)、ITメディアニュースに思うところあったので今日はそこからの話題。

「ニコニコ動画」や「初音ミク」が一部の層の人気を経て流行していく過程で、先進ユーザの当初の関心事は「著作権」でした。クリエイティブ・コモンズがネット時代の著作者に向けた「著作権」を提案する一方、依然として、アニメ映像(動画)やアーティストのプロモーション映像・音源などに関する制作者側からの「厳しい著作権」は存在し、それを侵害しない範囲でどう遊べばいいのか―法律を無視して覚悟のうえで楽しむか、諦めて近寄らないか―について、様々な論議が繰り広げられてきました。これは、版権元と二次創作者たちとの綱渡り的な関係を論じることによく似ています。つまり、コンテンツの制作側とユーザ、この二者における「対立」の図式です。

で、これがじょじょに変わってきたようです。

どう変わったのかというと、コンテンツ制作側とユーザが、「著作権」において、はっきりとは対立しなくなってきたのです。対立することで制作側が受けるデメリットが、容認あるいは黙認することによるデメリットを上回り、対立を良しとしなくなってきた、ということです。

この対立の図式の変化を、音楽(楽曲)配信における流通コストとプロモーションコストに主眼をおいて、分かりやすく解説しているのがこの記事です。

で、これに関する意見を書こうと思うのですけど、私はこの解説は、すごく言い得ていると思いますよ。ここから本論。

ビジネスモデルの変化について

関係性の価値が高まる時代っていうのは、本当にその通りです。簡単に説明すると、こんな感じ。たとえばとあるオタクのMさんが、ときメモGSという乙女ゲーをプレイして、すごく気に入ったとしましょう。Mさんはせっせとプレイ日記をつけ、ときメモの魅力を世界にアピールしました。すると、各地から情報が集まってきて、声優さんのトークイベントや、写真集(と呼ばれるキャラクターイラスト集)について知ることができました。これらは、オリジナルであるときメモに対する「付加的な商品」です。勿論、有料です。しかもけっこう高い。でも、おそらく、Mさんはここで躊躇わずお金を出すと思われます。

これは、実はちょっとだけ斬新な「流通」の仕方なんです。もうみんなにとっては当たり前かもしれないけど。

今まで、というか、ネットがこれほど広まる以前だったら、ゲーム制作サイドは、この「付加的な商品」なんてのを売ろうと思ったら、大変なお金をかけてプロモーションしないといけなかった。アニメイトで宣伝したりとか、TVやラジオでCMを流したりとか。それでも情報を得られた人はごく少数でしょうから、このビジネスはほとんど成り立たないんです。そういうあくまでも付加的なところに宣伝(プロモーション)費をかけるくらいなら、本体のゲームソフトと宣伝にそのお金をつぎ込んで、ゲームソフト自体を売ったほうがずっといい。何かを制作して売る=コンテンツビジネスというのは、従来はそういう単純な図式のものでした。

けども、今は情報の伝達手段が飛躍的に増えたので、すごくお金をかけてプロモーションしなくても「付加的な商品」を売ることができるようになったわけです。ユーザ同士のコミュニケーションが、勝手にプロモーションし続けてくれる。むしろ最初のゲームソフト本体は「起爆剤」のようなものになり、「付加的な商品」をいかに作っていかに売るか、こっちのほうが注目され始めた。

さて、ここで「付加的な商品」を「買う!」ってなった人は、何にお金を払うのでしょう? 実はこれがポイントなんですね、これが「関係性の値段」なんです。ゲームソフトとそれをプレイする自分、の関係性ではなく、「瑛様」と「自分」との関係性にこそ、お金を払おうとする。二次元を好きってつまりはそういうことで、ヲタク女子なら、この気持ちはよく分かると思います。

一方、「売るで!」って人たちも、単にゲームソフトだけをたくさん売るより得することになるんですよ。確か利益を上げる法則っていうのには、「売値を上げる」「原価を下げる」「量的にたくさん売る」「たくさんリピートさせる」の4種類しかないんです。まず、「勝手に広まってく」ことでプロモーションコストがゼロ近くなっていきますから、「原価」は下がりますよね。で、「関係性」にはみんなけっこう喜んでお金を出しますので、「売値」は上げてOKだし、関係性さえ接続されていれば、「リピート」も期待できます。おまけに知名度が上がるから、量的にもやがていっぱい売れる。この4通りの法則を全部満たす、かもしれない!

色々書いてきましたけど、これをぐるっと戻してまとめると、

  • ネットというメディアでユーザによるプロモーションが盛んに行われるようになった
  • 制作サイドではこれに目をつけ、付加的な商品をたくさん出すようになった
  • これがさらにユーザ間で評価されながら広まっていく、新たな流通の図式

こんな感じになります。これをもっともっと突き詰めると、重要なのは、「ユーザ同士のプロモーション」がほぼ「無料で」行われるところ。面白い製品でさえあれば、芸術家でも音楽家でもこの図式は当てはまる。こういった流れの先に、「フリーの動画」だったり、「音楽フリーダウンロード」だったりがあって、流通が成長していく。逆に、ここが規制されると、ユーザのプロモーションが制限されることになりますから、すべての図式が緩やかにもとに戻っていくでしょう。

なんかちょっと思い出したけど、「ユーザを幸せにする」ことを考える企業のほうが儲かる、みたいな禅問答っぽい指南があったような気がするなあ。

騙されてる感じもするけど、一言で言うと「自分自身」=「ひとつの商品」を解放することで色々得をするかもってことですね。

同人文化が豊かに発達したのは「日本に弁護士が少なかったから」

上のがメインなので、こっちはまあついでですけど、同じ記事から思ったことなど。一昔前までなら「ユーザによる自発的なプロモーション」の要と言えたのが二次創作、同人誌の流通です。本来の同人誌は、アマチュア出版全般を指したものですが、これがいつの間にか二次創作全般を含むような意味合いになった。これは、市場規模がのっぴきならなくなるまで、誰も訴訟を起こさなかったからですね。小競り合いは噂に聞くこともありましたけど。

そして、現在はこの、市場規模がのっぴきならなくなった状態です。やっぱり日本は訴訟の苦手な国であって、弁護士の数もまだまだ少ないので、いろんなことが見逃され、それがもう当たり前になってきている。(例外があのへんとかあのへんですよ、このブログでは絡みません)たとえば、これ本当にただのたとえですけど、プログラミングの世界でもたまにある話で、「この英語の本家サイトのロゴと翻訳を元に日本語版のサイトを作りたいんだけど、著作権的にどう?」みたいな質問を本家にすると、こう返ってくる場合がある。

「その質問についてキッチリ返事をしてしまったら、裁判をするしかない。聞かなかったことにしますから、常識の範囲内で好きにしてください。(好きに活動する分には構いませんよ)(どんどんユーザを増やしてください)」

だいぶ改変してるただのたとえですが、これがある意味そのまま、現在の同人誌市場をですね、物語っているといえます。まあ出版社に直接聞いたわけじゃないので、想像で言ってるので、根拠出せとかなったら私も沈黙しますけど、「暗黙の了解で取り締まらない」というような方針は、つまりこういうことですね。著作権的にほぼアウトであっても、「無料でどんどん宣伝してくれるユーザ」を、「見なかったふり」しているわけです。正々堂々と来られたら戦うしかないので、戦いが起こる前にかわしている。

これが多分もう10年くらい続いてるんじゃないかなあと思う昨今の流れです。もし、日本が訴訟大国で、腕利きの弁護士がたくさんいたら、もうみんな有罪で次々に取り締まられるでしょうけど、そうじゃなかったから、たまたま、二次創作界隈はここまでの市場になった。今は原点回帰というか、コミティアとかでオリジナルブームなのがまた面白いですね。

まとめ

私が今ここで書いてるようなことは、既に色んなところで書かれたことの寄せ集めで、目新しいことでは全然ない。ただ私が改めてここで書いてるってことの意味は、既存の意見にちょっとずつ自分のメッセージを挟んで自分の言葉で論じ直しているっていう、それだけのことで、ある意味ではこれすらも「二次的な」創作ではあるかもしれない。

なんかそういう、小難しいこととか社会のこととか経済のこととか、私は昔からずっと苦手でしたけど、知ってると世の中が広がるというか、知識に幅が出来て面白いので、みんな勉強して、また私にいろいろ教えてくださいということです。

あと、日本では国民性から言って二次創作が完全にアウトになるってことはないと思います。だからといって好き放題していいって意味じゃないし、ここまでならOKという線引きもないし、我々にできるのは、二次創作が好きなら何故そういう活動が表立って取り締まられないのか考えたりしながら、節度ある行いをする、ということだろうと思う。かつての自分に節度があったかといえば甚だ疑問ですけど、最近は私はもうこの曖昧な国民性っていうのに感謝すら覚えるわけです。そのうえ流通の仕組みが揺れつつあるのが面白くって仕方ない。

たまには社会学もいいなあってそういう話。

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://dutch-roll.com/wotaku/76.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
ニュースに思う-「二次創作」と「関係性の価値が高まる時代」 from dutch-roll.com

Home > essay | wotaku > ニュースに思う-「二次創作」と「関係性の価値が高まる時代」

Search
Feeds
Meta

Return to page top