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英田サキ作「DEADSHOT」レビュー

  • 2007-12-03 (月) 21:58
  • BL

(ネタばれは多少ありますが、このレビューを読んだとしても、この作品は十分に楽しめることと思います)

DEADLOCK 」「DEADHEAT」と続いた英田サキのアメリカンBLシリーズがついに本作「DEADSHOT」で完結したそうな。しかも出たの6月らしい。ずっと楽しみにしてたくせに、新刊情報を見逃していたのであった。約半年も!! 多大なる衝撃を受けるとともに、即刻Amazonで購入しました。レビューします。

さて本作品は、三部完結のなかなかハードな海外ドラマ風BL。一作目が「DEADLOCK (訳:こう着状態)」、二作目は「DEADHEAT(訳:同着)」。これが出た時点で三作目は「DEAD END(訳:行き止まり)」か「DEAD LINE(訳:致死量)」だろうと予想していたのだが、どちらも外れ、実際は「DEADSHOT(訳:命中弾)」だった。我ながら浅はかな読みであった。脱帽であります。SHOTと来るか。射撃か、そうかそうか。ちなみに、前二作の濡れ場を一言でまとめるとこんな感じだ。

エアバックのように一瞬でガチガチになった俺の息子でお前に激しいインサートを開始する

WAOなんて分かりやすいアメリカン!
というと乱暴すぎるので、もう少し詳細にまとめよう。まず主人公ユウト・レニックス(受け)は日系アメリカ人で元DEA(合衆国麻薬取締局)の現FBI捜査官、相手役ディック・バーンフォード(攻め)(偽名)は金髪碧眼のCIAスパイ。超豪華、すなわちCIA×FBIの一大ドラマティックファンタジーである。

なお、前二作については既に以下のようなポイントでレビューしてきた。

  • スラングにも詳しそうな作者が敢えて攻めの名前をディック(意味は検索してね!)にしたのはなぜだ
  • HIV感染の有無について真剣に悩む主人公がディックにフィーリングで「お前は大丈夫」と言われてあっさり納得した件について
  • 自分の性被害にコンプレックスを持つ主人公がけっこうあっさり白状してしまう件についてパタリロにおけるバンコランの過去を思い出した
  • 刑務所でワルい奴が日系人のユウトを「ヘイ、そこの黄色いビッチ!」と野次るところが非常に本格的で好感が持てる
  • エアバッグはクッション材なので柔らかい気もするが、それは海外の下半身事情について熟知したうえでの表現だと思っていいのか
  • 挿絵の評価が高いのは分かるが、個人的には美しすぎてついていけなかった
  • ユウトはじょじょに(おもに精神面で)女性化しているが、これについてもパタリロにおけるマライヒを想起させられるところである
  • 個人的にFBIとかCIAとかKGBとか忍者とかには弱いので、レビューが甘くなるのは仕方がないと思って頂きたい
  • 潤滑油としてオリーブオイルを手に入れるためだけにルームサービスのピザを注文するディックについて
    • ↑はたして渾身のギャグなのか? それともユウトをリラックスさせるための大人のユーモアなのか?

で、お待ちかね、三作目である。

これで完結となるので、とにかく筆がノリノリである。作者は、書くのに苦労したとあとがきで言っているが、読んでいる側からするととてもそうは感じられない。さすがである。ただ、一作目から続く流れとして、参考文献で学んだことはすべて書く、と言わんばかりのディティール描写についてはそのままだ。もはや私はこのノリに乗せられることを楽しんでいるので、アメリカの治安について勉強する意味でも没頭して読んだ。

注目すべきは、以下のせりふである。

「なに、ロブ? こんな素敵な子(注:ユウトのこと)をまだモノにしてないの? あんたのご自慢の息子は、いつから役立たずになっちゃったの。(中略)サタデーナイトフィーバーどころかエブリナイトフィーバーだったじゃない」

思わず唸る、アメリカンジョークのこのセンス、洋画大好きな作者ならではと言えよう。このせりふは、ユウトに恋心を抱きながらあくまでも友人としてサポートする大学非常勤講師ロブの友人、NYでスタイリストを生業にしているというオカマ風の男クリス・ジェイキンスが口にする。ここまでレビューしただけでも、BLに馴染み深い諸氏には本作品の特性が見えて来ることと思う。とにかく徹底的に自由の国・アメリカの風が吹いている。魔法学校で流行りのイギリスでも果てしないドイツでもどろぼうの神様がいるイタリアでもなく、ましてや本格BL発祥の地・日ノ本の国でもない、独立国家ユナイテッドステイツだ。ディラン&キャサリンも真っ青の表現力である。

と言うと言いすぎかもしれないが、いや私は賞賛を惜しまない。いろんな意味で。ことに、悪役であったコルブスの心理と散り際が素晴らしい。ここまで予定調和されると逆に気持ちがいいのである。これがデスノートなら、あるいは古屋兎丸なら、狂戦士コルブスによってユウト(甘っちょろい)もディック(案外甘っちょろい)も簡単に殺されそうなものではあるが、女性向けエンターテイメントであるBLの法則に従ってか、そうはならない。(当たり前か)実に感動的なラストシーンが用意されている。ぜひお楽しみ頂きたい。

さらには、洋画の翻訳字幕を見ているような会話文も散りばめられているので、丸ごと一冊英訳できるんじゃないかという錯覚に襲われもする。猛者には是非チャレンジして頂きたい、TOEICのスコアが跳ね上がるに違いない。ちなみに、一文だけ私が脳内翻訳できたせりふを紹介しておく。

「まったく問題はない」→「No problem!」

……書かないほうがよかった。

深く暗く耽美で、それこそが美徳であった「やおい」から一歩独立した、徹底的に明るく感動的であり、かつ最後まで安心して楽しむことのできるニューエイジの「ボーイズラブ」として、私は本三部作をある意味で「入門作品」としておすすめしたい。

DEADLOCK (キャラ文庫) デッドヒートDEADLOCK2 DEADSHOT―DEADLOCK3 (キャラ文庫 あ 4-3) (キャラ文庫 あ 4-3)

どれも表紙は左がユウト、右がディックである。二巻である「DEADHEAT」では、ディックが茶髪+めがねと、一部の方々にとってはこたえられない変装をしているところがなんとも心憎い。

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