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最近読んだ中で名作と思ったBLまんが5冊

  • 2008-10-25 (土) 0:05
  • BL

「あ、まだ生きてたんだ」みたいな感じのmatonoですが、毎日それなりに生きてます。

とくにジャンプは強烈にチェックしてます。最近ぬら孫にモエなくなってきたのは、ひとえに“リボーン色”“Dグレ色”が濃くなってきてるためです。若造が大勢の屈強な男どもを足もとに跪かせて杯を傾ける、みたいな独特の構図が続くことを期待してたんだけど、同世代のいい感じの美少年美青年がライバル役として出てくるといわゆる若い子向けのジャンプ作品、って感じになってきて、アタイはモエきらん……! ネウロは吾笹公式なのかと思って衝撃を受けた。ついでに、サイレンとスケット団の編集さんは同じ人みたいですね。なんとなく人情話担当なのか。

さて、BLまんが作品で気に入ってるのをいくつか紹介したいと思います。

ヤマシタトモコ 「恋の心に黒い羽」

恋の心に黒い羽 (MARBLE COMICS)

純文学に造詣の深い(←いや推測だけど)作者ならではの、読みやすい短編集。この人のBLはBLっぽくなくて、そんでも色気たっぷりでモエるので、早い話がいかにも私好みということです。(みもふたもないなァ)世間の評価も高いはず。

実は短編集の中では「イルミナシオン」が私は一番好きなんだけど、おすすめといったら断然こっちだなぁ。「イルミナシオン」はより文学的なので、入門的に読むと「つまんない」ってなる人がいそうだ。それは勿体無いので、最初は「恋の心に…」を読むべき。(って何様だ!)

やーもうBL飽きたなーって人は、「悪党の歯」を読んで唸るといいです。あの流れるような台詞運びにハートを撃ち抜かれるがいいです。男二人が出てくる話ではないので、どの人物がどの台詞を喋ってるのかが分かりにくいという、ヤマシタトモコ唯一の難点がこの作品に関してはきれいに取り除かれてる。(いや、まあフキダシの分かりにくさはヤマシタトモコに限った特徴じゃなく、BL界全土がそうだと思うけど。BLってキャラ立ってなくても成立するもんな)

ちなみに私が一番好きなのは精神的SMを描いた表題作で、二番目が三島由紀夫の「潮騒」がテーマに織り込まれてる「その火をこえてこい」です。

SMは当然というか、身に覚えがあるというかね、これ読んでるとき頭の中にずっと流れてたのが「翼をください」でさ、合唱っぽい感じで、すごくシュールだった脳内が。「その火をこえてこい」は唯一きっちりエロ落ちというか。いや単に私も由紀夫好きなのでというシンプルな理由でもあるんですけど。思春期の男の子が普通に三島由紀夫読んでたらそれだけで鼻血出そう。発想が粋だわー。読者なんか闇の彼方に置いていってくれと思います。

そんで、最終的に「悪党の歯」がいいわーと思ったら、「イルミナシオン」も読んでみてほしいです。「ばらといばらとばらばらのばらん」って短編が最高。「恋敵よ今、きみの手をとる!!」あーしびれるわー。この言葉の区切り方(実際は読点の位置で改行な)みてよ、この文語っぽさ。これがたまらんのです。これだからヤマシタトモコはいい。

この調子で世間に言いがかり的な過去を忘れさせて、どんどん羽ばたいてってくれその黒い翼で、と願わずにはいられないですね。BLばっかり描いて劣化したらどうしようくらいの心配まで勝手にしている。偉そうですみません。超好きなんだもんほんとに。

阿仁谷ユイジ「刺青の男」

刺青の男 (EDGE COMIX) (EDGE COMIX)

構成・エロ・えげつなさ、ともに阿仁谷ユイジ中最高と思われる傑作です。いや別にエロシーンが多いわけじゃないんだけど、いつもの阿仁谷ユイジ特有のファンタスティックなエロさではなく、やたら生々しい。やくざと刑事と、って感じの「刺青の」男たちが登場する3連作と、短編が1本。

あ、タイトルは「華氏451度」が有名なレイ・ブラッドベリの短編集と同じですけど、なんも関連はないです。「刺青」も「シセイ」と読ませている。

このところ私は、文学ならヤマシタトモコ、エロなら阿仁谷ユイジ、バイオレンスなら蛇龍どくろ、切なさはたうみまゆ、って感じで脳内BLフォルダ分けしてたんですけど、「刺青の男」で唐突に阿仁谷ユイジがこれらほぼすべての要素を持っていってしまった、といっても過言ではない。

あまり語ると台無しになっちゃいそうなので、読後の方を想定して私はこう読んだよというのを語ってみると(要反転!)、久保田刑事の手によって逮捕・投獄されたチンピラの潟木くんが、久保田に早く会いたいから何されても反抗せず模範囚やってた、みたいなくだり、あれ純粋に「愛のために」と一瞬錯覚するんですけど、自身にHIV感染の疑いがあることを分かった上での「会いたかった」なので、イコール「道連れにしてやる」だと思うんです。「殺してやる」というか。で、久保田も分かっていながら騙されてやってる、そこがすごい。

潟木くんからすれば、HIVという爆弾を投げ入れたら目的達成、その時点で久保田のもとを離れてってしまう可能性だってあるのに。久保田は全然平気。それがどうしたって感じです。

どちらも愛ではない、かといって憎しみだけでもないし、欠落といえば欠落なんだけど、その自棄っぷりは自分で自分を虐待してるかのごとく。自傷に近いんだよね。久保田なんかは本当に気持ち悪いくらいで、失明しても意に介してる様子がない。やたら自暴自棄な人とか自堕落な人が出てくるのは小野塚カホリって今まで直結してたんだけど、これは超えたと思いますよ。

そのくせ妙に明るいのも阿仁谷ユイジの特徴なんだよな……だからもうつかみどころがない。傷ついてても死にかけてても明るい。何一つ希望がなくて、太宰治なら死んでるだろうシチュエーションでも、なぜか皆へらりと笑ってる。人間らしくないんですよ。これもうほぼ恐怖。で、恐怖とエロが紙一重と思ってる私にとっては、阿仁谷ユイジのこういうホラー寄りのBLとかエロ過ぎマジ好き、となるわけ。証明終了? いやいや。

久しぶりに鳥肌たつ思いでした。

阿仁谷ユイジの他の作品だと、「喜劇は恋で進化する」と「ミスターコンビニエンス」かな。エロティクスfに時おりノーマルを描いてて、ピアスには東京漫画社のよりはるかにエロいのを描いてます。正直追っかけっていうくらい追っかけてる。好き。ただ、BLで挙げた二作品は、「刺青の男」と比べると見劣りすると思います。

蛇龍どくろ「エンドレスワールド」

エンドレスワールド (MARBLE COMICS)

BL界に峰山さんあり、と言わしめた作品。(嘘だ)

雑誌でちょこちょこ読んでたら名作って思ってたけど、コミックで一気読みしたらそうでもなかった(泣くかもと思ったが意外に泣きはしなかった、くらいの意味)、とはいえ、やはり何かしら考えさせられる一品。

蛇龍どくろは、コンセプトがとてもはっきりしたものを描く作家、って印象です。前作「シュガーミルク」も、短編ですら「これが描きたい!」ってのが明確なので、骨格がしっかりしてて読みやすい。阿仁谷ユイジが笑いながらハンドル切って谷底へ転落する運転手なら、蛇龍どくろはスピード違反しながらも確実に目的地を目指す運転手だと思う。(逆に分かりにくい?)

そんで、「人間くさい人間を描きたい」っていう欲求が、BLを上回ったのが「エンドレスワールド」。ぶっちゃけこれ、アフタヌーンとかで、ベテラン編集担当がついて、コミック何巻分でまとめましょうって決めて毎回打ち合わせしながら連載してたら、もっとずっと濃厚な、女子受けするバイオレンス作品になったんじゃないかと思うけど。それくらいテーマはしっかりしてんだけど。いかんせんBL雑誌の連載では限界があったんだろな。消化し切れてない題材が多すぎます。

とかいうと偉そうだけど……なんか、解釈を多様にするために敢えて語らなかったというよりは、語りきれなくて投げた部分もありそうな。まあそういう、一人の作家が最初から最後まで描きたいものを描いたんだ、というコンセプトも含めて「人間くささ」と捉えるなら、それはそれで十二分に面白い作品だと思います。

たうみまゆ「隅田川心中」

隅田川心中 (MARBLE COMICS)

東京漫画社連続で申し訳ない、しかし発売記念というか完全に贔屓というか、たうみまゆを除いては語れない、ぶっちゃけ某作品の同人誌は全部持ってる任しとけ、っていうくらい好きな作家の短編集。商業BLでは初かなと思ってるのですが、合ってるのかな……時どき既にプロで単に移籍っぽい人とかいるからな……。

いや、で、表題作が素晴らしいと思いますよ。私が推すにしてはほのぼの過ぎるのであれっと思われるかもしれないですけど、いいじゃんかほのぼの!! うーん、この人もヤマシタトモコと似てて、言葉がすごくきれいなんですよ。きれいというか、決まってるというか。ポピュラーな洋楽の歌詞を読んでるみたいなんだな。

完全に個人的な解釈ですが、まだ同人の癖が出てるというか、オリジナルの世界を構築するというより、なにか資料の中の世界を二次創作した感の強い作品が多いんですけど、多分作者もそれ分かってるんじゃないかと私は思ってて、そこの投げやりさも含めてツボというか。表題作はとくにそうですね。

さらに完全に余談ですけど、先日デート中に隅田川付近に迷い込みまして、ウロウロしてたらすごいヤバい感じのする公園とか通りに出て、後から調べたらハッテン場だったみたいで、連れが「俺ガン見されてた」みたいなこと言ってましたね。隅田川、怖ぇよ。

国枝彩香「番人」

番人 (ビーボーイコミックス)

上で挙げた方々は新進気鋭、という感じなのですが、最後はベテランというか、安心して読める感じの、それでいて変わった作家さんで、国枝彩香です。最近知って読み始めたんだけど、話の作り方がすごいうまい。読ませ方もうまい。今市子に通じる豊かな人間ドラマといった風情、とても読みやすいですね。坂井久仁江のPNで一般向け(ノーマル・少女まんが)も描かれてます。ビーボーイって水城せとなとかそういう作家さん多いな。

表題作「番人」や、登場人物が不幸連鎖していく「空の裏側」など、BLらしいBLなんだけども決して一般的ではない視点で描かれているものもあって、おすすめはやっぱりこの二作。

とくに「番人」の最後、ネタバレで書くけど、「番人が役目を終えた」ってことは、あの子は死んでしまうということなんだろうか。それだと深読みしすぎ? それとも、本当は閉じ込めておくべきは胤彦のほうで、彼が死んだからもう番人は必要なくなったという意味? あるいは、彼が死んで館の番人で在り続けるから、加納はその役目から解放されたということ? もしかしたら全部含めての余韻なのかもしれない。うまいなー。そして私、読解力ないなー。

一方「空の裏側」は、分かりやすく酷い。なんとなく先が読める気がするんだけど、必ず読んでた斜め上を行くので、小気味いいんですよね。で、おそらくありきたりのというか、三角関係だったり強姦だったりが絡む、BL的パターンではあるのに、いい具合に根暗で洞察が深い。

多分この人の特徴的なところは、人ひとりの人生を語ってしまわないところだと思うんですよ、だからこそ深みがある。今市子って書いたけど、吉野朔実にも通じると思うわ。吉野朔実が、少女まんがなのに女装して大人をだまくらかす男の子を描いてた(「栗林かなえの犯罪」です)ことがあって、あれを読んだときの「やられた」って感じに近い。(近いとはいえさすがに吉野朔実は段違いなのですが)話を戻すと、人生を24ページだの32ページだので語ってしまえるの、手塚治虫や萩尾望都くらいじゃないですか、なので、短編なら割り切って下手に細かく描写しないほうが、底が見えなくてリアルなんですよね。しかも的を外してない。

この的を外してない感じ、的確に人生を切り取ってる感じがですね、おそらく長いこと同人やってたらできなくなる部分だと思うんですよ、「二次」を描くときは「一次で描かれなかったとこ」を描くことが多いわけだから、選んでるようで選んでない。同人作家の描くオリジナルがしばしば安定感を欠くのは、ここの取捨選択に甘さが残るからだと思うのですが、どうでしょう。(半分くらいノリと思いつきで言っててごめん)

で、番外で不細工短編。

b-boyの不細工特集に寄せた作品らしいんですけど、ひでぇの、本気で不細工が出てくんの、洒落になってない、ギャグ、出落ち。「美醜なんか関係ないぜ!」みたいな、そういういわゆる「いい話」じゃねぇの、シュールな域なの。しかもそのくせ哀愁漂っててちゃんとハッピーエンドなの。これ読んだ瞬間にですね、私の“BLアンテナ”がきゅぴーんてなったわ。自分の感性に合うBL作家を見つけるときゅぴーんてなるやつが。これでもう完璧ロックオンですよ。国枝彩香ロックオン。

ロックオンして次に買ってみた「未来の記憶 風の行方」もよかったよ。(続き物が一冊にまとまってます)普通にほのぼのしたBLで、NHK連続ドラマとかになってもよさげだと思いました。やっぱり分類としては今市子だなぁ、「楽園まであともうちょっと」を読んだときの清々しさを思い起こす感じですね。

まとめ

日出処の天子とNO.6を読んだら急にBANANA FISHが読みたくてたまらなくなってるけど、どこに行っても1巻が見つからないので神の采配だと思って趣味のプログラミングを急ぐ。

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