久々に忙しいし、毎度のことながら薬の飲み始めは副作用で胃腸がやられるんですが、追い討ちをかけるようにじゃがいもの毒に中りました。人体の異変には慣れているつもりの私でも、今回はびびったです。いやこれはない。はるか昔、小学校の調理実習でも似たような目に遭って以来三度目くらいです。ということはアルカロイド系の神経毒に極端に弱いんじゃないかと思います。(それならニコチンでとっくに死んでるだろ)とか冷静に分析している場合でもなく、朝から盛大にアレしまして虚脱、会社に電話したら爆笑されるし困ったものです。この毒は下手したら死ぬので爆笑は良くないよ! でも生きてたのでまあよかったという感じです。有機栽培のやつは毒素も多いらしいからみんな気をつけてください。これでもかというほど厚めに皮むいたほうがいいで。私も調理には気をつけてたんだけど、とくに成長が早くて毒が作られやすい品種だったっぽい。医者も脱水に気をつけて胃腸薬飲んどけ程度だったし今はけろっとしています。
それにしても先週見た「空気人形」がよかったです。是枝監督の新作。同監督は「誰も知らない」以降しつこく見てるんですが、「花よりもなほ」が期待したほどでもなかったのでちょっと疎遠になってて、しかし今回のテーマにあまりにも惹かれたので平日とぼとぼ遠征して見ました。今「東のエデン」スペシャル仕様になってるショッピングモールです。すっごいでかいパネル出てるし、アニメにも出てきた映画館内のバーではエデンをイメージしたカクテルとかあって感動した。カップル向けっぽすぎてさすがに入れなかったけど。(こと映画に関しては異常なほどお一人様指向なのですが、場末とかじゃないきちんとしたバーはさすがに気を使う)
そんでだから「空気人形」がよかったという話です。ネタバレするけどいいよね?(答えは一応聞いておきます)
これあらすじを書かないとわけ分からないと思うので、先にあらすじを言っておくと、ある日突然ビニール製のラブドール(というかダッチワイフ、これが空気人形)が心を持って動き出す、という、そういう話です。私の夢が詰まりすぎててちょっと逆に怖いようなテーマです。ラブドールの持ち主は板尾創路、空気人形にペ・ドゥナ、空気人形がフラフラと恋をしてしまうビデオ屋の店員がARATAという、明らかにおかしい、いい意味で狂ってる配役です。ARATA、すごく好みですけどいわゆるイケメンではないし。
しかしながらARATAの年のとり方の見事さといったらなかったです。「ピンポン」の頃の、どこか幼い感じがなくなって、ほんま、いい年の兄ちゃんになってました。でもあの暗さはそのまま。声も変わらない。「真夜中の弥次さん喜多さん」のときは妙な役すぎて全然意識してなかったけど、主役級で出てくるとじっくり眺められてもうなんか辛いですね。なんであんな出てくるだけで切ないのでしょうか。堺雅人の泣き笑い顔に唯一対抗できる役者だと思います。
対する板尾も、ありえないほどラブドールの似合う中年を演じ切っていて驚きました。この映画が、暗くて妙なテーマなのにコミカルタッチな情けなさも残してるのは、ひとえに板尾の魅力ゆえだと思う。ラブドールからオナホ外して風呂場で洗ってるシーンが冒頭に出てくるんですけどこれがまた悲しいし笑えるし性的な恋愛の情けなさを非常によく体現してた。ああいうの出されるとBLなどは寓話としても完敗な気がします。その後も延々救われない、最後までひとりぼっちの板尾、なんとなく自分の未来を重ねて見てしまって泣けたね。もう人形でいいやとか思う心の最終形態はアレですよ、愛してる愛してるってラブドールに語りかけながらひとりでオナホ洗うのよ、それだって人間の姿というのがすごい究極的にワイルド。人間、私、ワイルド。(違う違う)
んで、ペ・ドゥナも超かわいいんですよね、メイド服だけじゃなく、ひらひらふりふりのワンピースから超ミニまで、何よりラムネの空き瓶があんなに似合う女の子は既に絶滅したと思ってたけどペ・ドゥナがいましたかという感じです。驚きました。映像の中の話ですけど、たとえ映像でもラムネの空き瓶をあそこまで自然に使いこなそうとすると中二の代表映像作家岩井俊二大先生(←褒め言葉ですよ、DVDとかけっこう持ってるくらい見てますよ)くらいまで心を痛めつけないとダメじゃんとか思ってたけど全然、是枝監督ナチュラル。超ナチュラルに浜辺でARATAとデート、ラムネの空き瓶をわあーってかわいい声をあげながら拾うシークエンス、完璧です。非の打ちどころがなかった。
こうした主人公に、過食症の女(星野真理※マジで見直した)とかニュースで見た殺人事件を自分がやったって思い込んで話してまわる老女とかその話を聞かされ続ける警察官とか老いに逆らい続ける悲しいOLとか変態青年とか今にも死にそうな老齢の元教師とかがぞくぞく出てきて、群像劇風になる。群像劇でないのは、常に空気人形にスポットが当たってるからですけど、街いっこ丸ごと一昔前の差別的なイメージで構成された閉鎖病棟みたいなんですよ。ロケ地は築地の奥のほう、戦前の建物とかまだ残ってるような地区で、そこから東を眺めるとエデンのショッピングモールのあたり、開発が進んでガンガン高いビルが建ってる地帯が見えるという。(ちょうど自分がいる映画館のあたりが対岸に見える超ラッキーな状態だった)ラブドールが動き出すみたいな退廃的な展開を、この景色がうまいことオシャレ仕立てに丸め込んでて、World’s End Girlfriendのカワイイ音楽ともすごく合っててよかった。今度ぜひ写真を撮りに行きたいと思います。高いカメラ買おう……。
最終的にこの話、がんがん悲劇的な展開になってくんですけど、そこも敢えてネタバレすることにすると、人間みたいに動けるようになって嬉しくてしょうがない空気人形は、ビデオ屋の店員に恋をして自分のご主人様である中年男を捨て、キラキラ世界は美しいと思いながら生きようとするのに、やっぱどうしてもその体はビニールのままで、空気が抜けたらしぼむし、空気入れのポンプを捨てても年をとることはできないし、造物主である人形師(これまたオダジョーがえらい素敵な芝居をする)も絶対的な答えをくれるわけではなく、自分の仲間たちは「燃えないごみ」として捨てられる運命で、人間も所詮は「燃えるごみ」ですよと。一方ビデオ屋の兄ちゃんは、空気人形を見て「自分も同じようなもんだよ」と自虐的なことを言ってて、それを空気人形はもう心から信じちゃってこの兄ちゃんもビニールの人形なんだって思ってんのね、だからやっと思いが通じて兄ちゃんと結ばれそう、っていうときに悲しいことになる。まあこれもこの映画特有のエロシーンで、空気の抜けた空気人形に兄ちゃんが「息を吹き込む」という映像をして擬似的に性交のように見せてるわけなんですけどこれがまた卒倒するほどエロいシーンなんだけど、公開終了間際ですがぜひ映画館で見てください、空気人形はこのエロい行為を自分と同じ体を持つ(と思い込んでる)兄ちゃんにもしてあげたいと思い、兄ちゃんの腹をぶっ刺して「あなたの栓はどこ?」って聞くのよね、切ない、こんな切ない話ないだろ、結局兄ちゃんは血まみれになり息絶え燃えるごみの袋に入れられた挙句ゴミ捨て場に放置され、空気人形も愛を失ったと思って自ら燃えないごみ置き場に横たわる、エンディング。
この怒涛の展開が本当に素晴らしいの一言に尽きる。私はなんだか感極まって泣きましたし、オナホ洗うシーンから地続きでこんな美しい最悪のエンディングに繋がるっていう、単館系の邦画ならではというかどっちかというと是枝映画ならではの気もするけど、ちょっと首とかが震えるレベルの感銘を受けました。バッドエンドとか破綻が多いとかそういうものは好きなのでたくさん見たり読んだりしましたが、これほど清濁どっちも持ってて尚且つ綺麗なオチというのは、滅多にない、というか初めてかもしれない。強いて言うなら「メゾン・ド・ヒミコ」や「嫌われ松子の一生」が似た感じだろうと思いますが。(岩井俊二までくると破綻の分量が明らかに多いしより一般向けになる)あとついでみたいに書くけど星野真理の中性的な顔立ちがストライク過ぎて困った。一撃必殺、隙のない顔をしています、この映画限定で。
いやもうだらだら書いたので誰もここまで読まないとは思いますが、マジでこれは書きとめておかないと自分が後悔する気がしたので心ゆくまで今書かせてもらいました。今シーズン気になる映画たくさんあったのに、これだけでほぼお腹いっぱいになってしまった。まあでもヴェスペリアとカイジは見ます意地で。カイジ原作が死ぬほど面白かったんで+藤原竜也。とか最後に書いても明らかに蛇足だな、とにかく心に愛と夢と絶望があふれて刃物を研ぐみたいな感覚を取り戻せる気がしたので、おすすめですすごく。
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